俺の周りは敵だらけ
まだ復讐という目的を視野に入れていたあの時、
ルークの日記を盗み見てそこに書いてある「ヴァン」の文字のあまりの多さに軽く冥舞を感じたのと同時に俺の大切なものを失ったような、負けてはいけない勝負に負けたような感情がむくむくと大きくなったのを覚えている
「俺とヴァンとどっちが好きだ?」と幼いルークに聞いてみれば少し考えて「両方。」と答える彼を見て形容し難い、妙な敗北感とそれを聞いてどうするつもりだったのだという空虚感が残ったのもはっきりと鮮明に思い出せる
ただ単に困らせたかったのか、それとも本心から聞きたかったのか分からないが
「どっちかだけ、助けられるって言ったら。どっちを助ける?」
かなり意地悪な質問だな、と我ながら思う
案の定ルークは困ったように眉を寄せている
暫く黙って俯いて、それで顔を上げたときに目が合った
悲しそうに揺れる瞳は憂いており、僅かに薄いエメラルドは細められて俺は息を飲んだ
眩しいものを見るように細めた瞳の奥で燻るように燃えるそのイロを見て俺は呼吸を忘れた
次第に「息を吸え」という脳からの命令が頭痛と共に体中を響き、忘れた記憶を掘り起こすようにゆっくりと呼吸をしようと息を吸うが、それでも体が勝手に大量の息を吸い込んで咽た
身体に入り込んだ空気を全て吐き出すかの如くに咽る俺をルークは心配そうに見やる
その瞳には先ほどのそれは見えない
右手が痛い
頬を抑えて見上げるルークの瞳はあの時の瞳と同じだ
「俺かヴァンのどっちだ。」
他愛無い話のはずのその言葉は「俺か世界のどっちだ。」という形に姿を変えて俺に突き刺さる
そしてルークの瞳はあの時のそれだ
ルークは俺を選ばなかった