小動物って役に立たない
夜盗に襲われた
野宿をすれば避けて通れない夜盗
だから毎晩見張りを決める
アニスとイオンは除いての計5人
この5人が交代で見張る
その時間は、ルークの番だった
まだ、感触が残ってる・・・
ぱちっと音を立てて火の粉を散らす焚き火は
暗いくらい森の一画を仄かに照らす
情けなく震える手を覗き込み横目でナタリアを見る
毛布に包まった彼女はその顔は見えない
美しく赤く光る金色の髪だけが僅かに覗く
王宮で大切に育てられてきた彼女
覚悟の度合いが違うのか、
いつまでも自分だけが取り残されるようで、焦る
昼間斬ったにんげんの感触
それがまだ鮮明に残っているような気がする
焚き火に照らされた己の体は返り血に染まっているようでぞっとする
なんと情けない姿だろう
足元にいる小さな動物に悟られないように顔を膝に埋める
その膝を抱えるように両腕で囲み、
赤く染まった体から目を背けた
そうやっていたからか
ふと、周りの人の気配に気が付いた
近くに置いてあった剣をぐっと握りあたりを窺う
緊張が走った
昼間、あれだけ人を斬っておいてまだ斬らなくてはならないのか
下がりそうになる眉尻を意図的に吊り上げ
柄に手をかける
「――ッ。」
遠くでかすかに聞こえた悲鳴
あぁ狙われたのはココではなかった
ルークは足元でソーサラーリングを力一杯掴んでいるミュウを見る
「お前はココにいて見張っててくれ。何かあったらすぐみんなを起こせよ。」
ジャ、と金属音が響き白銀の刃を引き抜いた
ルークはミュウの制止の声を無視し深い森の中を駆けた
ぼんやりとあわい光が見える
近づくにつれてはっきりとあたりを照らすその火は、赤い
立っている男が3人
地を舐めるヒトが2人
あぁ、夜盗だ
彼らの周りは焚き火に照らされずとも、赤い
このままほっといて、こっちに来られたら厄介だな、
幸い相手は3人
このまま踏み込んで一人、そのまま斬り返して、2人
あと1人だったら、勝てる
最悪2人目が止めを刺せずとも、手負いで2対1ならばなんとでもなる
こいつらが自分たちの寝ているところの来ないとも限らない
だったら、いまここで―――
そう考えてルークは驚いたように止まる
今、自分は何を考えた…?
己の邪魔になり得る存在を簡単に殺そうとしたのだ
手が無意識に震える
俺はいつ、
いつからそんな風に考えるようになった…?
邪魔だから、殺す
それは夜盗と変わらないではないか
恐怖で顔が歪む
「誰だっ。」
男が一人ルークの方を見て槍を構える
残りの男達も同様にコチラに注意を寄越す
もう逃げられない
ルークは草陰から勢い良く飛び出し、槍を構える男の懐に潜り込んだ
長い槍の柄を右手で払い、がら空きの胴に捩じ込む
一瞬驚愕の表情を見せたその顔はすぐに苦痛に変わり
ルークの体は真っ赤に染まる
無意識だった
体に染み込んだ反射だったのだ
無意識に、ルークは人の命を絶った
「ぅ、あ…ぁ。」
動かない口で何を言うつもりなのか、
震える手は勝手に剣を手放した