器に注ぎ込み飲み干した





もういや
お願いだから自分で何とかして頂戴

出掛かった言葉をティアは辛うじて飲み込んだ





平和な昼
目的地に予定より早く着いたお陰で生まれた貴重な自由時間
ナタリアは買い物に出かけたし、アニスとイオンは二人で出かけてしまった
ジェイドは部屋で本を読んでいるのだろう
ティアは何をしようかと思考を廻らしていた所、ルークに呼び止められた

一緒に買い物とか、第七音素の勉強とかなら喜んで相手も出来よう

ティアは手元のカップに口をつけ、香り立つ紅茶で喉を潤す
「それで?今度は何かしら?」
ルークは言い出し辛そうに視線を落とし、それでも唇を動かした

「あの、な。ガイが。」

諦めが肝心よね、とティアは小さくため息を吐く




「はいはい、ガイ。ちょっと時間いいかしら?」
ティアはガイの部屋の扉を乱暴に開けながら許可も取らすに椅子に腰掛ける
ガイも初めは驚いたが苦笑して向かいの椅子に座る
「…予想できてました、って顔ね。」
肘をついて手に顎を乗せたティアは面倒臭そうにガイを見やる
「ルークはティアを頼りにしてるからな。」
相談するならティアだと思ってた、とガイは笑いながら答える

ルークに頼りにされるのは嬉しい事だ
でもその相談内容如何ではご免被りたいのも事実
「申し開きがあるなら聞きましょうか?」
どこかの王様のような傲慢な態度でもガイの表情は神妙だった
「男同士、だろ?」
おもむろに口を開いたかと思えばその一言
ティアは短くそうね、と返すだけ
「男と、女ではやっぱり身体の作りが違うじゃないか。俺、21歳だし、やっぱ、さ。」
頬を掻きながら、照れたように言う。あぁ、そういうことか、とティアは小さく理解する
「つまり、身体の関係をつくり辛いって事?」
「君は意外と言い難いことを口にするな。」
「覚悟した女は強くなるのよ。」
ティアは椅子の背の凭れ掛かり髪を別ける
「ルークに負担は掛けたくないんだ。辛い事もしたくない。かといって、その。俺が、そっちはちょっと…。」
男としてのプライドが、とガイは言う
「交代にすれば?はい、コレで解決ね。もう私の手を煩わせるような事は止めて。ただでさえルークがガイと付き合うことがイヤなんだから。」
口からでかかった言葉をティアは必死で飲み込む
別にガイが一人で堂々巡りする分には全然全くこれっぽっちも構わない、がそれによってルークに被害があり且自分にまでとばっちりが来るのは耐えられない
「ルークにそういった知識があるのかは知ってるの?」
なにせ7歳だ
教えてない限りは「こうのとり」と思ってても不思議ではない
ガイは小さく首を横に振る
「ソレがわからないんだ。俺は教えた記憶は無いし、かといって本人には聞けないし。」
ふぅ、とティアは短く息を吐いて最後に問う
「ルークのことが嫌いになったりとか面倒臭くなったから避けてた訳じゃないのよね?」
「それだけは絶対にない。」
気持ちの良いほどにいきったこの男を本気で殴り飛ばしたい、ティアは震える拳を必死で抑える
ティアは椅子から立ち上がり、開けっ放しのドアに向かって歩く
「ですってよ、ルーク。」
そこから姿を表したのは燃えるような赤い髪の少年
ルークはそ、っと顔を覗き込ませティアに促されるように室内へと入る
ガイは一瞬唖然とするがやがて思い出したかのように言い訳を考える
「あ、いや。ちがくて、な。その、さっきの話は。」
あら、滑稽
ティアは少し溜飲が下がったのを確認し、ルークに話し掛ける
「ルークは、ガイとどんな事をしたいの?」
わたわたと目に見えて狼狽するガイを尻目に問う
ルークは少し頬を染め、ガイをちら、と確認しティアを見る
やがてティアに促されて口を動かす
「よく、分かってないんだけど。一緒に話をしたり、出かけたり。後は剣の稽古をしたりとか!」
満面の笑顔で言うルークを見て、ガイが目に見えるほど肩を落とす

「だ、そうよ。ガイ?」
「は〜い。…聞こえてます。」
さっきの会話を聞いた上でこの答え
当分、ルークの貞操は無事ね
ティアは輝かんばかりの笑顔でルークと話し、ガイは乱暴に髪を掻き、「まぁいいか。」と笑う