ひとりきりにしないで





マルクト国王ピオニー陛下から賜った仕事をこなしにダアトへ向かった先でルークと会った
陽射しの中で一層輝く強烈な赤は、幻覚かとも疑ったぐらい自分の夢に出てきたルークそのもので、もう何年も会っていなかったような痛烈に愛しい感情が沸き起こる
「ルークじゃないか。」
今まで贈った手紙の返事がこなかった事も何もかも全てが真っ白になり、その口は嬉しさで歪んでしまう
が、彼は零れそうなほど目を見開きガイを見る
「…ガイ?」
ルークは力なく呟く
視線をスライドさせるとそこには亜麻色の髪が映る
ルークはティアと一緒にいるのか
ずきん、と胸が痛んだがガイは無視した
男同士の不毛な思いにルークを巻き込んではいけないのだから
「…久し、ぶり。」
ルークは視線を伏せて言う
あぁ、とガイも短い返事を返す


触れたい


燃えるように赤く輝くその髪に
その陶器のような艶肌に触れたいと思う
だが、以前の恐怖が脳裏を駆け巡るのだ
思い出すだけで、痛む


「触るな。」
冷たい声音と払われた手
あの時と同じように拒否されたら、どうしよう
そんな不安が燻っている

俺って結構繊細だったんだな、と苦し紛れにおどけて見るがこの胸の痛みは取れない






ティアと一緒にダアトに行った所でガイとあった
屋敷の執事に手紙を潰されていた事が分かって、謝りたかったから丁度いいのかも知れない
でもあまりに急な事で気持ちが追いつかなかった

ガイがいない間、物凄く寂しかったし心細かった
なんどガイに会いたいと思ったかも分からない
なのに今目の前にいるガイに戸惑う
どうやって会話を切り出せば良いのか忘れてしまったように思い出せない、思いつかない
ガイと会って嬉しいはずなのに、怖い

イタズラに髪を引っ張って、相変わらず気苦労してそうだよな、とか当り障りの無い会話をすれば良いのに
足が
腕が
体が動かない


どうしよう













「手紙…。」
ルークは意を決したように口を動かす
ガイはふ、と顔を上げるとそこには悲しげに伏せられた瞳が見える
「手紙…ごめん。返事、書けなくて…。」
ルークの声は段々小さくなっていく
ガイは、気にするな、と答えるだけだ
理由を聞かない
それはガイ自身が理由を聞くのを恐れたからだ
もし、ガイにとって絶望的な答えが返ってきたら、そう考えると口が動かない
ルークも理由を言えなかった
もちろん訊かれれば答えられただろうが彼は聞かなかった
自分を信じなかった俺を見限ったの、か?

「元気そうだな。」
ガイはそう言って視線をティアに移した
これ以上ルークを見ていられなかった
触れたい恐怖と拒絶される恐怖
自分の欲望は鍵をかけ、奥底に沈めなければならない
ルークは視線を逸らされた
自分には興味が無いとばかりに、ガイはつい、とティアを見やる
今、自分と幼馴染の間には溝があるのだと痛感する
全ては自分が相手を信じなかった所為
自分がわるいのだと握る拳に力を入れる






もう一度、一緒に旅ができるのは嬉しい
でもこの距離が苦しいのだ