眼をみつめる自信が無くて
駄目だ
駄目だ駄目だ駄目だ
なんど頭の中で反芻しようと体はまるで言う事を聞かないではないか
本当にこの体は自分の体なのだろうか
過る疑問に答える事が出来ない金髪の彼はその実焦っていた
というのも彼が組み敷いているモノに問題があるのだから
目が痛むほど白いシーツに波打つように広がる赤い髪
短く切ってもその美しい紅い色は更に映えるように色めく
微かに脅えの色が浮かぶ彼の青緑色の瞳を捉え、言い知れぬ疼きを感じるではないか
頭では制止を叫んでいる
体にはその叫びは届いていないのか、それともあえて聞こえない振りをしているのか定かではない
心の底から今のこの状況から脱したいとは思っていないのだ
そのまま唇を落とせば恐々としながらも応じてくれるのではないかとも思う
だが、そこで応じてくれなかった場合だ
腕を振り払い、赤い髪を振り乱し、拘束から逃げようとする彼を大人しく解放できる自信が無い
「なんてな。吃驚したか?」
と、何でもないように言って早々に解放すればきっと彼も疑問に持ちつつも「なにしてるんだよ。」と笑ってくれるだろう
だが、止まらないのだ
段々理解してきたのか、それとも本能的に危険を察知したのか
彼は怒りに目を吊り上げ足掻く
上から抑えられている状況で拘束を緩める事はない
彼の無駄な足掻きにさえ疼くこの感情は一体なんなのか
「ガイ、どうしたんだよ。」
途端鮮明に聞こえた彼の呆れた声には、と目が醒める
今まで見ていたのは何だ?
呆けたようにぼーっとするガイにルークは肩を叩く
「何ぼーっとしてるんだよ。朝飯、用意できてるってさ。」
ようやく夢だったという事に気がつきため息をこぼす
安堵なのか、それとも落胆なのか自分でもわからない
「ガイ?」
首を傾げ覗き込むルーク、が彼のその表情が夢と重なる
「何でもないッ。」
ガイはそのままベットから這い出ようとしてふと、違和感を覚える
「ガイ?朝飯だってば。」
腹が減っているのかルークはガイを急かすようにガイの腕を取る
が、ガイは少し乱暴とも思えるがその手を振り払った
「悪い、先行っててくれ。」
有無も言わさぬ力がこもっているように感じたルークはそうか、と短く返事をして静かに部屋を後にした
「なんか、調子悪いみたいだ。」と、小さく聞こえたかと思うと2人分の足音が遠くなっていく
「まさか、ねぇ?」
小さく呟いた声音には途方に暮れる響きが混じっている
この熱、どうしよう
とりあえず当面の問題を考える
そのうち、嫌でもこうなった原因を考える事になるような気がしたからだ